風に吹かれて 雲に誘われて


丹後リベンジに燃えて

2009年 完走記


2009年9月20日













 


 
 初めて参加した2002年時に完走して以来6連敗、1勝6敗の状態です。

 いつも練習不足に加えて暑さに負けてヘロヘロで碇高原を越えることが出来ません。ひどい場合は

途中で仲良くなったランナーとビールの話で盛り上がり無性にビールが飲みたくなって途中でリタイヤ

なんて事もありました。しかし、今年は萩往還250キロを5年かかってやっと完踏したこともあって何としても

碇高原を越えて完走したかったのです。




 大会前日の9月19日(土)に車で自宅を出て京丹後市に向かいました。

途中出石で美味しいおそばを食べて久美浜に着きました。明日の大会で16キロ地点の

エイドになっている道の駅に寄りました。そこで五玉の穴の中に小さなカエルが鎮座し

ている「無事かえる」と書かれたキーホルダーを見つけて明日のお守りにする事にしま

した。丹後のコースは網野町をスタートしてから久美浜を1周して再び網野町に戻り、

今度は弥栄町から碇高原を越えてそれから日本海に出て間人を通って網野のスタート会

場に帰ってくるというものなので、このお守りは何だか御利益がありそうな気がしまし

た。

 それからアミテ京丹後に行って受付を済ませました。そこで、若ちゃんや若だんな、

カワニャンさんをはじめ多くのラン友とお会いしました。

 それから今晩の宿の夕日ヶ浦温泉に移動して、雲の間からのぞいた夕日を見て明日へ

の思いをはせました。

 夕食はやっぱり日本海です。美味しい魚と美味しいお酒、この時ばかりは明日の事を

忘れて食べて飲んで気が付いたら「しまった!」と思ってもあとの祭りです。

 

 午前4時過ぎのスタート会場には多くの知り合いのランナーがいました。

今日の天気は良さそうで予報では最高気温23度くらいになるそうです。

23度なら涼しくていいかも、なんて甘く考えていました。

「今朝は少し寒いくらいだね、あれ、風来坊さんその格好で寒くないの?」

とTシャツと半パンの私を見かけてひとりが声をかけてきた。そしてすぐに

「あっ、そうかそれ以外に十分身に付いていますか!」

だって、言われてしまいました。

「どうせ体脂肪たっぷりなので寒くないですよ。」

と笑いながら答えたものの本当は昨夜少々飲み過ぎて二日酔い気味なのであまり

寒さを感じなかったのです。

 今回の大会のゲストは増田明美さんです。スタートまで司会の若ちゃんとのゲスト

トークが始まりましたが、どちらかというと立ち話をしているおばさん達というノリ

でしたね。(失礼)

お二人のお喋りが続いているうちにスタート時間の4時30分がやって来ました。  

 約1100名が100キロ先のゴールを目指してスタートしました。

「きっと帰ってこいよ!」と言う声援が聞こえてきます。


 網野の町を抜けていよいよ七竜峠の登りにかかりました。

日本海の潮騒と秋の虫の声、それとランナーの息づかいが聞こえてきます。

さあ、いよいよだ!と思っているとなだらかな下りになり、また登りになりました。

今度こそキツイぞ!と身構えているとまたまた下り道、そして登り。

「あれ、思っているよりもキツクないぞ・・・。」

たしかに途中からはずっと登り道が続いていくのですが、さほどに感じられません

でした。しかし、涼しいのに汗はしっかりとかいています。二日酔いがゆっくりと

覚めていくのが実感できました。

 そうこう思っているうちに気がついたら峠に到着しました。9年連続で参加していて

こんな風に感じたのは初めてです。まだ余裕があるので峠のエイドには寄らずに通り

過ぎました。

 下りは飛ばしところなのですが、例年下りきったところでバテてしまうので押さえ

気味に走って行きました。そして、10キロの通過時間が1時間程です。

 余裕があると感じているわりにはいつもと変わらなかったです。


 今回の宿泊地でもある夕日ヶ浦温泉街を通り抜けて久美浜に向かいます。

昨日大会会場のブースで新しいシューズを購入してその試し履きに夕日ヶ浦温泉から

このコースを往復10キロ走っていたのです。そして、今日は購入したばかりの

ニューシューズで参戦しています。我ながら無茶な事をしているなあと思いました。


 15キロ地点で1時間30分、ほぼキロ6分ペースです。自分のウルトラマラソンの

ペースにしては早すぎるのですが、後半の事を考えると落とす勇気がありません。

自然に落ちるのを待つことにしました。

 

 16キロのエイドで楽しみにしていた梨を頂きます。今朝は二日酔い気味だったので

何も食べずに走っていたのでお腹がペコペコでした。でも、お腹いっぱい食べる訳には

いきませんからね。

 酒蔵の前で20キロ、ほぼ2時間です。キロ6分、ペースは落ちていません。

 

 25キロを過ぎたあたりで、カワニャンさんに追い越されました。

さすがカワニャンさんは変わらずの淡々とマイペースで坂道を走って行かれました。


 30キロのエイドで3時間10分くらいでした。少し落ちてきました。

ここのエイドで少しパンを食べて先ほどからグウグウなっていたお腹を落ち着かせ

ました。前回はコーヒーもあったので期待していたのですが今回はありませんでした。

 この30キロからがひとつの正念場です。ここでホッとしてペースを落としてしまうか

踏ん張って今までのペースが維持できるかです。確かにそろそろ疲れが出てくる頃です。

しかし、ここで頑張って時間を稼いでおくことが後半を乗り切るのに大切になってき

ます。

 久美浜を回って再び夕日ヶ浦温泉に帰ってきて35キロの浜詰駐車場前のエイドで

トイレ休憩をしました。トイレでふと横を見ると紫のわか帽が3つ、さすがに可笑しく

なりました。

温泉街を通り抜けると、いよいよ復路の七竜峠です。しかし、往路みたいな元気は

残っていません。走りと歩きを交互に前に進みます。萩往還に参加して以来何が何でも

走らなければいけないという気持は無くなってしまいましたね。


 それでも例年ほど苦しむこともなく峠に到着しました。

「今年は調子がいいのかなあ?」なんて自惚れてしまいました。

実はここ丹後100キロは一番最初に苦しみぬいて完走して以来6年連続でリタイヤ

している自分にとってはいわく付きの大会でした。そして、やはり4年連続でリタイ

ヤしていた萩往還250キロ(こちらは一回も完踏していませんでした)をこの5月

にやっとの思いで初完踏することができたのでその勢いをかってここも何とか完走し

たかったのです。

 しかし、スロースタートなので7月、8月とあまり走りこむことが出来ず9月になっ

てやっと重い腰が上がりました。自宅のある川西から丹波篠山までの48キロひとり

マラニックをしたりラン友の箕面〜妙見山往復41キロ5時間マラニックに参加したり

して、大会前日の19日までに9月だけで248キロ走りました。

あとは「練習は裏切らない」その言葉を信じて走るだけです。

でも、あまりにも付け刃すぎて不安はありました。


 峠のエイドも軽く給水だけして道を下っていきました。実際まだそんなに疲れは

ありません。しかし、かなり歩いたので40キロ地点では4時間30分くらい

かかっていました。でも、まあこんな物でしょう、

いやいつもに比べたら出来すぎです。

 七竜峠の下り道の途中にいつもの私設エイドがあって紫蘇ジュースを頂きました。

いつもここでは元気がでます。ありがとうございました。

日本海のリヤス式の海岸を下ったり登ったりして走って行きます。

往路では暗くてわかりにくかったのですが、この大会の醍醐味ともいえる

良いコースです。時間に追われることなくゆっくりと走ってみたい所です。

 峠をくだった浅茂川漁港エイドでは椅子にすわってうどんを食べました。

ここで44.6キロです。さすがにどっと疲れが出てきました。

でもまだ半分以上の距離が残っています。ここのエイドでは少し長居をして

しまいました。まあしかし碇高原のための貯金さえ残っていればもうタイムには

あまりこだわっていません。


 ここからいつものように網野の街中を通り抜けるのかと思っていたら海岸の方に

コースが設定されていました。

八丁浜シーサイドコースを走ってほほ街中をさけるようにして県道53号に出ました。

ここからはいつものコースです。毎年暑さにやられてヘロヘロになってしまうところです。

しかし、今年は朝に比べたら日も照ってきて暑くなってきたとはいえ風があり体感的には

そんなに暑く感じませんでした。今年は気候も味方してくれているのかも知れませんね。

ただ、向かい風なのはいただけませんでしたが・・・。

だからそれほど苦しまずに「あじわいの郷」に着いたのですが、いつもの悪い習慣で

水分を取りすぎてしまって途中からお腹がギュルギュル鳴っていました。

ここでまたまたトイレ休憩をして時間をロスしてしまいました。

なんとか考えなくっちゃ・・・。

 何はともあれ元気を取り戻して再び県道53号を走って56キロの弥栄庁舎のエイドに

到着したのは6時間40分でした。ここでばら寿司を頂いて今日初めてのご飯を

食べました。正直ホッとしました。やっぱり米ですよ。

そして、ご飯にはお茶が飲みたくなったので自販機を見てみたら500mlしかありま

せんでした。実は冷たいお茶が飲みたかったのですがお茶は

お腹にたまるのでずっと我慢していたのです。だから、300mlの物を飲もうと

思ったのですがありません。しばらく考えて少し飲んでからペットボトルを持って

走る事にしました。そして、どこかでのエイドでペットボトルは捨ててもらえればいいや、

と思っていたのですが、後でこれが意外に役にたったのですね。


 弥栄庁舎を出て国道482号にでました。そろそろ60キロの先頭集団が追い

抜いていきます。やっぱり走りが違いますね!

 黒部で100キロは右折、60キロは左折と別れて行きます。

さあ、いよいよ越すに越せない碇高原の登り道です。

 時間はスタートから7時間15分経っていました。碇高原の関門時間は

10時間10分なのでまだ3時間あります。そして、高原まで約14キロ余裕が

ありそうですが、厳しい道なのと今までの疲れで乗り越えられるかどうかです。

 最初の内はなだらかな登り道と平坦な道が続いてたので、走れるうちに走ろうと

思ってゆっくりですが走りました。しかし、坂道が少しきつくなるとすぐに歩きに

変わります。走って歩いてまた走り、やがて歩きばかりになってきました。

 弥栄庁舎のエイドで買ったお茶のペットボトルですが、途中のエイドで冷たい水を

入れてもらって手に持って少しずつ飲みながら行きました。

 そして、つぎのエイドでまた新しい冷たい水を入れてもらいました。

これがけっこう良かったです。と、いうのも予報では最高気温23度と言っていましたが

実際は27度くらいまで上がって、日差しの中ではかなり暑かったからです。


 スイス高原と碇高との分岐を左に曲がって行くと大会の車が止まっていて、

スタッフの人が「氷はないですか?」と言いながら走り回っていました。

 よくみるとひとりの男性ランナーが道に倒れていました。たぶんこの暑さで熱中症に

なってしまったのでしょう。その後、大丈夫だったでしょうか?

 厳しい登り道を息を切らして歩いているとやがて69.6キロのエイドが見えてきました。

去年はここで時間切れで悔しいリタイヤでした。

それが今年は無事に通過できる、そんな思いが蘇ってくると目頭が熱くなってきます。

ふっとみると主催者の坂本さんが居るじゃあないですか!

坂本さんは某TVの24時間番組でタレントさんをコーチして良く画面に映っている

有名人です。坂本さんはエイドを出て行くランナーと握手をしています。

私も握手をして頂いて、思い立って

「写真を撮らせてもらっていいですか?」と聞きましたら

「それなら一緒に撮りましょう。」と言って下さいました。

そして、がっちりと握手した写真を撮って頂きました。

元気100倍です。


 そして、歩いて歩いてやっとの思いで碇峠に到着しました。

ここで左折して関門の碇高原エイドまであと2キロ半です。

ほとんど下り道なので快適に走る事が出来ました。3.4キロの碇高原総合牧場のエイドに

ついに到着しました。時間は10時間です。心の中が熱くなってきました。

思わずこのエイドでマラソン川柳を応募しました。


 ”写真とる その口実で 休みとる   風来坊”

 今年は関門時間に40分の余裕を残して出発できました。

残り26.6キロ残り4時間です。感動ものですがまだ油断は出来ません。

エイドを出てすぐにアイスクリームの自販機を見つけて「レモンバー」の

アイスキャンデーを買って食べながら走りました。

これで勇気200倍です。

 アイスキャン食べながら走っているとそれを見ていたランナーがニヤリと笑って

「やっぱり、それが最高ですね!」と話しかけてくれました。

アイスキャンデーを食べ終わった頃に次は私設エイドがありました。

何と!ついに待望のビールがありました。あまりもの嬉しさに2杯も頂いてしまいました。

これで勇気300倍です。

 

 ビールパワーを得て下り道をどんどんと飛ばして行かました。

誰にも抜かれること無くたぶん20〜30人は追い抜いていけたと思います。

これは先週の箕面〜妙見山マラニックのおかげだと思います。ただし、これは下りだけの

ことで平坦になったらゆっくりペースでゴールを目指すためです。

そして、案の定、抜かせて頂いた大部分の人にはまた抜いて頂いたと思っていますね。

 

 峠を下り終えて国道178号に出てから走って行きました。この道は車が多くて少し

恐かったです。だらだらと登っていくの丹後松島に着きそこからトンネルに入って

行きました。トンネル内は蒸し暑くて息苦しかったですね。

 国道178号線を走っていくと60キロのランナーと合流しました。

急に走っている人数が増えましたね。

87.2キロの丹後庁舎のエイドで特製魚つみれ汁を頂きました。

いい出汁でとっても美味しかったです・・・、が、

贅沢は言えないのですが、もう少しつみれが大きかったら嬉しかったです。

それとおにぎりがほしかった・・・。

 エイドを出てからはゆっくりながらマイペースで順調に距離を稼いで行きました。

 しかし、疲れは限界を向かえようとしています。

心のなかでは「練習は裏切らない、練習は裏切らない」呪文のようにその繰返し

繰り返しです。でも、この分なら13時間切りも可能なような甘い気持が起こって

きましたが、そんな時に再びお腹がギュルギュルと恐ろしい音を立ててきました。

 何とか95,7キロのエイドにたどり着いてトイレに駆け込みました。

と、言いたいところですが先客がいてしばらく無下に時間が過ぎていってしまい、

13時間切りはその時点であきらめてしまいました。やはりお腹のケアは今後の

最大の課題です。

 

 後は時間内にゆっくりゴールしたらいいかあ、なんて開き直っていたのですが、

さっきから60キロのランナーが後ろから追い抜いては50メートルほど先で歩いていて、

私はゆっくりながら走っているので再び抜いてしまいます。そして、しばらくするとまた

追い抜いていって50メートル先で歩き出す。そしてまた抜く。

その繰り返しだったのでさすがにイラッときてしまいました。

抜くなら抜くでサッサと行ってほしかったのですが、その人のペースなら仕方がないと

あきらめていました。そして、トイレエイドで離れられると思っていたのですが、

そのエイドを出てしばらく行くといつの間にかまた一緒に走っていました。 

そうこうするうちに私に火が着いてしまい再び抜き返してからはペースアップして

「抜けるものなら抜いてみろっ!」って気持になりそのまま走り通してしまいました。

考えてみたらその人のおかげで最後に良いペースで走れたのかも知れませんね。

今に思えば感謝、感謝です。


 そして、あと1キロを切って快調に走っていきました。

しかし、体はボロボロ、心は浮き浮き変な状態です。

 どこかの走友会の応援の人達が私のかぶっているわか帽を見て

「わか練さん、お帰りなさい!」と声を掛けてくれました。

やかてアミティ京丹後の建物が見えてきて、その角を右にまわればついにゴールが

見えてきました。多くの人達の声援を受けながらゴールに向かいました。

そして若ちゃんの「お帰りなさい、風来坊さん」の声に迎えられて

ゴールテープを切りました。

7年ぶりのリベンジです。長かった・・・。

13時間10分19秒

7年前よりも10分更新出来ました。

 実はもっと感動しようと思っていたのですが、先にゴールされていた多くのラン友に

迎えられその涙も押さえられてしまいました。

そして、何と70キロ地点で写真を撮って頂いた坂本さんも居られて再び握手をして

頂きました。

そして、カワニャンさんに促されて増田明美さんともツーショットを撮って頂いて、

さらに厚かましくも握手までして頂きました。本当に最高の一日を過ごす事が

できました。

 再び思いました。「練習は裏切らない」と。

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