風に吹かれて 雲に誘われて

ウルトラよもやま話


その1 休憩には自動販売機が最高


 休憩には自動販売機が最高!なんて、あたりまえの事だと思いますか?

私も最初に聞いたときはそう思いました。

しかし、この話をしてくれたのは140キロ以上の超長距離マラソンを走るベテランランナーです。

だって、自動販売機で水分給水するのはあたりまえですよね。

ところがそうじゃない。

140キロを超えると当然、昼夜を通して走りますから途中で睡魔に襲われます。

しかし、昼間ならまだしも夜ともなればけっこう冷えてきます。

ベンチなんてとんでもない。屋根でもあれば最高ですがなかなかそうもいかない。

そこで、自動販売機なのです。

自動販売機に寄りかかってみると何とも心地の良い温もりが。

ぐっすりと眠ってまた走りだす。

そこまでして、走りぬくウルトラ魂すごいと思いませんか?



その2 コーラの威力


 長い距離を走ると必然的に体力を消耗します。

なにかエネルギーを補給しなければいけない。

だが、距離とともに食欲は減退していきエイドステーションでもあまり食べる事ができません。

しかし、空腹感は残る。そこで、コーラが威力を発揮します。

コーラは糖分が多くカロリーは高いし、それに炭酸でお腹はふくれて空腹感はいやされます。

空腹感が無くなればそこでもう一踏ん張りできるというものですね。

これは多くのウルトラランナーが承知のようで、私みたいに遅いといつも自販機のコーラの

売り切れに泣かされています。



その3 ウルトラぱわー


 しまなみ海道100キロ遠足の受付で”ウルトラぱわー”なる謎の薬をもらいました。

何とも謎めいた薬です。説明によると

「この薬をエイドステーションで受け取る水に1袋溶かして一気に飲むとパワーが復活する」

というものでした。

新開発された薬でしょうか?それとも劇薬でしょうか?

薬を裏返してみるとその成分が記載されていました。

「伯方の塩」

なあんだ、正体はしなまみの名物、伯方島の塩でした。

試しに80キロ地点で飲んでみました。

「塩水なんて、しょっぱくて飲めないよ」と思っていましたが

いざ飲んで見ると全然しょっぱくありませんでした。

それだけ体から塩分がなくなっていたのでしょうね。確かに飲んでから力が復活してきました。

ウルトラでは水分補給も大事ですが塩分も忘れずに。



その4 ビールはエネルギー


 走り終わった後で飲むビールは最高ですね。

私もそれが楽しみで走っているようなものです。ウルトラマラソンに参加するまではそれが常識でした。

確かにフルマラソンのエイドステーションにビールが置いてあるなんて見たことがありません。

ところがウルトラマラソンのエイドステーションでは時々ビールが存在するのです。

(公式か非公式かはわかりませんが)

またそれを当然のように飲み干して走りゆくランナーがいるのですよね。

萩往還でもエイドのたびにビールを飲んでいるランナーがいました。

(萩往還ではビールはエイドでは置いてません。すべて自腹購入です。)

その人に聞いてみました。

「ビールなんか飲んで大丈夫ですか?」

すると、

「ビールはエネルギー。こんなに長い距離はエネルギーの補強をしないと走れませんよ。」

試しにある大会のエイドステーションでビールを飲んでみました。飲んだすぐには凄く気持ちよく

元気になりましたが、そのうちしっぺ返しにあってヘロヘロになってしまっいました。

やっぱり飲みながら走るウルトラランナーは凄い。



その5 UMML(ウルトラマラソンメーリングリスト)

 ウルトラランナーにはお馴染みですが、これからウルトラマラソンを始めようと思っている

ランナーは一度UMML(ウルトラマラソンメーリングリスト)を検討してみるのもどうでしょうか?

UMMLはウルトラランナーのメーリングリスト、開設者と管理者は白石恭史さんです。

ウルトラマラソンに関するさまざまな情報がメーリングリストで得られます。

ここではお互いをアムラーと呼び合っていて、現在700名以上の登録があります。

そしてアムラーグッズというものが色々あって、特にアムラーシャツを着ていたらレースの途中で

声を掛け合って知り合いになることもしばしばです。そのグッズも年に1、2回、アムラーグッズ

制作班からメールがあって購入する事ができます。

また大会によってはアムラーによる前夜際やアフターパーティ、私設エイド(誰でも利用できますが)

などがあります。

さらに年に何回かアムラーよるマラニック大会があります。関西、四国、東北が活発ですね。

登録は無料なのでお気軽に参加できますよ



その6 エイドステーションでは止まるな


「え〜、そんな馬鹿な!」

そのアドバイスをベテランウルトラランナーから聞いたときにその人に思わず言いました。

どういう事でしょうか?私は今までエイドステーションというのは

「食料や水分の補給をとって体を少しの間体を休められる所」

という認識でした。

たしかに記録をねらうトップランナーならゆっくりと休む事はないでしょうが、

完走ねらいのしかも制限時間ぎりぎりの自分達にとってはオアシスのはずです。

しかし、その人の言う事は、

「エイドステーションで止まっている時間を一度見直したらわかる。かなり消費している筈だ。

それに一度停止してしまった筋肉をまた元の状態に戻すにはそれなりの時間がかかる。

エイドステーションで補給するな、という訳ではない。エイドステーションで受け取ったおにぎりも

水も手に持って歩きながら食べたり飲んだりしろ、止まるなという事だ。自販機のコーラも同じことだ。

自販機で購入したらその場で飲まずに歩きながら飲め。少しでも前に進め。」

しかし、なかなか実行出来ませんね。つい甘えちゃいます。

そして再びスタートする時の辛いこと辛いこと・・・。



その7 替えシューズを忘れずに


 ウルトラマラソンでは荷物を途中のエイドステーションまで送ってくれます。

その数は大会によってことなるが、たいていは1カ所か2カ所です。

そこに着替えや補給したい物を指定された袋に入れて依頼します。

シャツや靴下の着替えやタオルが大半ですが、ある人の荷物をみると替えのシューズを入れていました。

それも2足も。

 袋もふくらむが大会に持ってくるのも荷物になると思ってその人に聞くと

「靴のトラブルが無いとも限らんでしょう。雨が降る場合もある。それに足も腫れ上がるので

シューズのサイズも変わっているはずです。またその時の状況で足の状態は違うのです。」

その時はそんなものかなあと思ってました。

ところが去年の萩往還に参加したときのことでした。

180キロ地点の宗頭の公民館で仮眠するためにシューズを脱いで休息したのですが、

いざ出発という時に自分のシューズが無いのです。ボランテアの人も一生懸命に探して下さったのですが

ついに見つからなかった。

まだ行けるのにシューズが無いばかりにここでリタイアするしかない。

その悔しさはたまったものではないですよ。

その時に予備の替えシューズをやはり2足持ってきていた人がいてサイズが合うならばと

言って1足を貸して下さったのです。その時は天にも昇るくらい嬉しかったです。

でも、結局はサイズは合ったが履き慣れたシューズじゃあない事もあって途中で足が痛くなって、

約200キロ地点の萩市内でリタイヤしてしまいました。

しかし、ここまでこれた事とシューズを借りれた感謝の気持ちで、シューズを間違われた悔しさは

何も無かったです。

 大会が終わったあとで大会本部に問い合わしたところ、宗頭に自分と同じメーカーの同じ型番の

シューズが残っていたそうです。しかし、サイズは2センチも小さい物が・・・。

180キロ走った足には2センチ大きいシューズが足に合ったのでしょうか?



その8 傘をさして走るランナー

 それは数年前のチャレンジ富士5湖の100キロの部での事でした。

スタートの朝は雪、雪、雪の一面の銀世界でした。

それでも、大会は開催されました。

そのとき一人のランナーが傘をさしていました。

私は思わず彼に尋ねました。

「まさかとは思うのですが、傘をさして走るのですか?」

「ええ、通勤ランで慣れていますから。」

「でも100キロですよ!」

「はい、慣れていますから。」

そのランナーを30キロ地点のエイドステーションで見かけました。

確かに傘をさしたまま走っていました。

「凄い、本当に傘をさして走ってるのですね。」

「ええ、慣れていますから。」

と彼は言って走り抜けました。

結局その大会は大雪のために47キロで終わってしまったのですが、

レースが終わったあとそのランナーを見かけたのでまたまた尋ねました。

「ゴールまで傘をさして走ったのですか?」

「ええ、慣れてますから。」

凄いランナーもいるものですね。

(でも彼の腕はレースが終わったあとも曲がったままに見えました・・・。)



その9 雪のウルトラマラソン

 この前紹介した”傘をさして走るランナー”で参加した2003年チャレンジ富士五湖は本当に

凄い雪でした。スタートまえの午前4時時点で会場の富士北麓公園は銀世界でした。

当然大会は中止になると思われました。

ところが予定通り117キロの部が4時30分に、100キロの部が5時にスタートされました。

傘をさして走るランナーには驚きましたが、この雪の中、ランシャツ、ランパンに

簡易のビニール1枚かぶって走っている人にはびっくりしました。

寒くないのだろうか?自分は長袖Tシャツとタイツ、その上にウィンドウブレイカーさらに

上下のカッパという出で立ちなのにこれでも寒かったです。

山を下って街にでれば何とかなるだろう、という期待は完全に裏切られどこまでいっても雪中行軍でした。

たよりになるのは117キロの部の人達や早いランナーが作ってくれた1本のワダチ道だけです。

みんながそれをたよりに走るから必然的に一直線状態になりました。

ランナー以外無人の上九一色村の近くをきちんと整列されて黙々と走る姿は知らない人がみたら

新興宗教の修行に写ったことでしょうね。

湖面から吹き上がってくる風が強烈に体温を奪っていきます。あのランシャツ、ランパンの人は

大丈夫だったのでしょうか?

下水道の金属製の蓋に足を取られて何度も転びそうになりました。

しかたがないので飛び越えて行きます。ところが足元ばかり気にしていると、

雪の重みで垂れ下がった街路樹の枝で顔面をしたたか打ってしまいます。

そこで今度はしゃがんで通り過ぎます。

結局、下を見て飛び越えて、上を見ててしゃがんでと、まるでアクロバット走行でした。

 ついに大会は47キロで中止になりました。正直ホットしました。

しかし、それからが大変でした。雪の中を走ったあと結構濡れているのに47キロ地点の公民館に

ほとんど荷物を送っていなかったのです。しかも公民館はなぜか暖房がほとんど効いていませんでした。

雪道の影響で送迎バスはなかなかやってこないので、寒さに震えながら何時間も待たされました。

エイドに送る荷物は何があるかわからないので常に着替えを送っておかねばならないという良い

教訓になりました。

でも、良い経験ができたと今では思っています。それに117キロの部や100キロの部は雪の中とは

いえまだ走れたからよかったのですが、10時スタートの70キロの部の人たちはスタート前に中止が

決まってしまって本当に気の毒でした。

こんなに貴重な体験ができなくて・・・。

詳細は 完 走 記 の中の 富士さんや〜い を見て下さい。


その10 リタイヤの理由

 これもベテランのウルトラランナーからのアドバイスです。

「完走したければリタイヤの理由を3つ以上作るな。」

と言うことです。

ウルトラに限らずマラソンは自分との葛藤です。強気な時もあれば、弱気になる時もある。そんな時に

リタイヤをする理由を3つ以上あればかなりの確率でやめてしまう、という事です。

「苦しい”、”痛い”、”辛い”は当たり前、自分だけでない、みんな同じだ、と考えればリタイヤの

理由はさらに減る。だから完走できる。」と言っていました。

しかし、いざとなれば打ち上げ花火のごとく「リタイヤの理由」が打ち上がる自分でした。



その11 ジャニーランランナーのお風呂

 ジャニーランという一日70〜80キロを連日走り続けるマラソンがあります。

例えば北海道縦断、旧東海道走行、中山道走行とか色々ありますが、そんな大会に参加している

ランナーから聞いた話です。

ジャニーランは夜は決められた宿に宿泊します。そしてお風呂に入るときに、

「多くのランナーはお風呂に入ってもシャワーを使って浴槽には入りませんよ。」

「へえ、浴槽に入った方が疲れが取れるのじゃあないですか?」

「いえ、決して足は冷やしても暖めてはいけないのですよ。そんなことすると連日80キロも

走れないですから。どうしも浴槽に入りたい人は足が湯に浸からないように上に持ち上げて入ります。」

え〜、まるで横溝正史の「犬神家の一族」の映画に出てくる1シーンみたいな状態ですね。

そんな姿は想像したくないです。



その12 攻撃的歩き

 ウルトラマラソンのコースはサロマなど一部を除いてほとんど山の登り道があります。

だからすべてを走り通すことが出来るランナーはトップランナー等一部の人に限られます。

ウルトラでは”登り道は歩く”と割り切ることも大切です。

ある大会の登り坂で何とか走って登ろうとあがいていた時に、歩いて登っているランナーに

すっと抜かれてしまいました。その歩くスピードの速いこと、速いこと。

ベテランウルトラランナー曰く、”攻撃的歩き”と言うそうです。

「けっして歩いているからといって休んでいるわけではない。しかし、登り坂で無駄なエネルギーを

使わない効率の良い方法だ。」

じゃあ誰でもそんなスピードで登り坂を歩き通すなんて事は出来ませんね。やはり、ふだん山歩き

をして鍛えているそうです。

 疲れ果ててダラダラと歩いている私とは同じ歩きでも大きな違いですね。


その13 ウルトラウォーカー

 ウルトラ大会というのはマラソンだけだと思っていましたが、ウォーキングの世界にも

100キロ大会が存在します。

数年前に大阪城〜奈良の飛鳥を往復する100キロウォーキング大会に参加しました。

その頃はすでに何回か100キロマラソンを完走した経験があったので余裕だと思って

参加しましたが、それがとんでもない間違いでした。

その大会のルールは一つ”走らないこと”です。ところがこれがなかなか難しい。

自分では走っているつもりは無いのですが、ついつい早足で手を振ってしまい、

「走ってはいけないよ」

と何度も注意を受けました。

途中からトップ集団の人達について行ったのですが、この集団はまったく休憩しません。

エイドは50キロ地点の一つしかないので自主的に休まないと止まる所はありません。

結局50キロまで信号以外止まる事はなかったです。

一緒に歩いていたトップ集団の人に尋ねてみました。

Q:食事と給水は?

A:ポーチにおにぎりと水筒を持っています。

Q:トイレはどうするのですか?

A:スタートで済ませておけば、後は50キロ地点で用は足ります。

その人と仲良くなったので色んな話を聞くことが出来ました。

「私たちは自分たちのことを”アル中”って呼んでます。」

「えぇ、アル中ですか?」

「そうです、歩き中毒、略して”アル中”です、ハッハッハッ。」

80キロくらいまでトップ集団について行ったが、足の肉刺が10カ所くらいできてしまい

トップ集団から脱落してしまいました。

今まで100キロマラソンで肉刺を作ったことがなかったのになぜこんなに肉刺が

できてしまったのか?

今回の大きな間違いの一つはマラソンシューズで参加した事でした。

それから、ランとウォーキングでは足の使い方が全然違うということだと思います。

それでも後から来た人には抜かれる事なく大阪城にゴールできたので総合5位だったらしいです。

(だったらしいというのは正確に成績をとらないので自己申告なので)

完歩タイムは100キロ18時間くらいでした。

そしてトップの人は17時間以内でゴールしたそうです。

ウルトラウォーカー、恐るべし。

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